いつもの学校の帰り道
9月になって少し涼しさを感じる夕暮れ
ふと見上げると、まだ青さの残る空にくっきりと、真丸のお月様が見える。いつもより大きく感じるその月を、不思議な気分で見上げていた。
「獄寺ーッ!!!」
遠くから聞こえるいつもの呼び声に振り向くと、そこには部活を終え、笑顔で走ってくる山本がいた。
自分をめがけて走ってくる姿に、不覚にもドキっとしてしまい、きびすを返して歩き出す。
「まてよッ」
追いつかれ、肩に手をかけられ、心臓が飛び跳ねそうになる。
「んだよッ」
ぶっきらぼうに返すのがやっとだ…。 とても、まともに顔なんか見れねー…。
「部活終わるまで待っててくれてもいーじゃんかぁ、俺たち恋人どーしだろ?」
「―!!!、誰が恋人だッ!!!」
さらりと笑顔でとんでもないことを言ってくる山本に、引っ付かれるのも嫌だと、肩に置かれた手を振り払う。
すると、突然両手首を握られ、その事に文句を言おうとした瞬間、口唇を奪われた。
「―ッん」
いくら、夕方とはいえ、ここは通学路だ、誰かに見られる可能性もなきにしもあらず…しかも道路の真ん中!!!
抵抗しようとするも、両手首を握られた状態で動くこともままならない。息を止めるのも限界…と思った瞬間解放された。
「―な?恋人じゃなきゃ、キスなんてしないのなv」
嬉しそうに笑う山本に、なんでこんなやつ好きになったんだろうと自嘲する…こんな人目も気にしない無神経な野球バカなんかに…。
「なぁ、獄寺、今日おまえの家いってもいー?」
「?」
「十五夜、いっしょにしよーぜ?」
「じゅうごや?何だソレ?」
聞きなれない言葉に、意味がわからず答えることも出来ない。
「あ、そっか、十五夜ないんだイタリア!!! じゃぁ、用意して持っていくから、待ってて、あ、あとオヤジ特製マグロ丼も持っていくから!!!」
突然何か思い出したように、目を輝かせて、好き勝手喋って自分だけ納得すると、準備があるからと、獄寺を置いて走っていってしまった…。
なんだ?
てか、まだ否定も肯定もしていない内から、勝手に“じゅうごや”とやらをすることになってしまった…。
山本が走り去った道を、見つめながら、深いため息を吐くと、遊びに来る山本の為にコンビニで飲み物でも買って帰ろうと、先ほどより更に暗くなった街路地コンビニ目指して歩き始めた…。
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