帰宅ししばらくすると、なにやら大荷物を抱えた山本が嬉しそうにやってきた。
手には、よく野原に生えているフサフサの“pampe ricoprono d'erba”…ススキだ。
「わり、ススキ探してたら遅くなっちまった!お腹空いてないか?」
「…空いた」
ススキに夢中で珍しく正直に答えていることに獄寺は気が付かない。
そんな獄寺が、めちゃくちゃ可愛くて、今にもキスして押し倒したいとか思ってしまう山本だが、ここは我慢する。
「ちょっと、まってな、すぐ用意するから♪」
勝手知ったる我が家のような態度で、台所へ向かう山本の後を、つられて付いていく。目の前で揺れているススキが気になってしょうがない…。
「あ、これ活けて欲しいのな〜v」
突然、ススキを渡され、一瞬固まる。活けるといっても、花瓶なんてこの家にあるわけがない。
「活けるモノねーよ…」
「あぁ、そっか、獄寺、空き缶ねーの?それでいいよ」
空き缶に水を入れて、とりあえず、ススキを刺し、テーブルの上に置いて眺めてると、山本が、約束のマグロ丼となにやら、白いお餅を持って来た。
「餅?」
「中秋の名月だからな〜♪ご飯食べたら、月見しよーなvあ、中秋の名月は、昔からお月さん見上げて、餅とか芋を食べる行事なんだぜ♪十五夜とも言うのな〜♪ススキ飾って、豊作を祝ったらしいぜ?イタリアにはないだってな」
「あぁ…満月は月の女神の死を意味したり、心を惑わす力があるから、嫌われてる…つか、なんでテメーと月見しなきゃなんねーんだよ」
「何でって、獄寺と月見したかったのなv」
ススキや団子まで用意され、大好きなマグロ丼までもが目の前にある状況で、嫌とは言えず、今日もまた山本のペースに流されつつある獄寺だった…。
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